Musicadentro

第95号 (24/08/2008)

夏が急に終わってしまったかのような天候が続いていますが、皆さんいかがお過ごしでしょうか?今回はシンフォニック・ロック・バンドや若手カンタウトリーチェの作品を中心にお送りします。

アルバム・カバー

アーティスト名 / アルバム・タイトル (リリース年) レーベル名, レコード番号. (収録曲数)

Linguaggio

Reale Accademia di Musica / il linguaggio delle cose (2008) Delta Italiana, DEDL 21537. (全7曲)

イタリアン・ロック最盛期の1972年にアルバム・デビューした Reale Accademia di Musica の復活アルバム。とは言っても1974年に共演盤を出したギタリストの Adriano Monteduro が中心となって新メンバーを集めて再結成されたもので、Giuseppe Aramo (vo, per), Antonello Monteduro (p, key), Manuel Muzzu (b), Adriano Monteduro (key, vo) のギター・レスの4人編成となっています。サウンドはかつてのような深いリバーブのかかった独特の音色のピアノを中心とした幽玄なシンフォニック・ロックではなく、共演盤で見せた牧歌的でファンタジックな路線を現代的に洗練させたような良質な歌物シンフォになっており、ほとんどの曲が7分を越える大曲で構成されています。ゆったりとしたリズムに乗せてキーボード・オーケストレーションが雄大な音空間を描くオープニングの "Genesi" からややしゃがれた歌心溢れるヴォーカルを楽しむことができます。また、タイトル曲の "Il linguaggio delle cose" では Claudio Baglioni を想わせるたおやかなメロディを朗々とした歌声で歌い上げています。18分を越える2部構成の大曲 "La pace nelle biglie di vetro: Un mondo nuovo" ではきらびやかな音色のキーボード・オーケストレーションをバックに牧歌的なメロディを歌い上げる前半とロック色の強いうねるようなリズムをバックにキーボード群が活躍し、よりシンフォニック・ロック的な展開を聴かせる後半との対比が印象的です。デビュー作当時の面影を期待すると肩すかしを食うとは思いますが、歌物シンフォとしてはかなりいい仕上がりになっています。

Vermiglio

Francesca Romana / Vermiglio (2008) Universo, US247/CD. (全11曲) CD-Text

Lecce 出身の若手カンタウトリーチェ Francesca Romana のデビュー・アルバム。共作を含め全曲自身で作詞作曲しており、クレジットは本名の Francesca Romana Perrotta 名義になっています。また、ピアノとアコースティック・ギターの演奏にも長けているようで、アルバムでは1曲だけですが Farfisa を演奏しています。オープニングの "L'incantesimo" から特徴のあるロリータ系ヴォイスでノスタルジックな雰囲気を湛えたメロディをしっとりと歌い上げています。軽快なバイオリンに導かれた "Il gusto amaro" では反復の多いエキゾティックなメロディをシャウト気味のヴォーカルで聴かせてくれます。端正なピアノの調べに乗せて歌われる "Mille maschere" は切ない歌声を聴かせるロック・バラードです。"Paolo" では胸を締めつけるような哀愁漂うメロディをファルセットを織り交ぜた情熱的なヴォーカルで聴かせてくれます。哀しみを湛えたような音色を奏でるピアノのアルペジオに乗せて切々と歌い上げる "Aiutami" ではほのかな色気を感じさせるヴォーカルが印象的です。ミステリアスなメロディをややエキセントリックに歌い上げる "Salome'" ではエキゾティックな雰囲気を演出しています。幻想的な響きを湛えた "Canzone verde" ではロリータ系ヴォイスを駆使してノスタルジックなメロディを紡ぎだしています。ジャケット・デザインを含めてトータルにアンティーク調を押し出しているイタリアにおいては稀少なタイプのカンタウトリーチェ作品だと思います。

Nuda

Ania / Nuda (2008) L'n'R, 3000105. (全15曲)

2006年アルバム "Tutto e Niente" でデビューしたNapoli 出身の若手カンタウトリーチェ Ania の2年振りのセカンド・アルバム。共作ではありますが全曲の作詞作曲に参加しています。短いイントロに続いて始まるタイトル曲の "Nuda" は囁きかけるようなオープニングからダイナミックな歌声を聴かせる展開の大きな曲で、伸びのあるセクシーなヴォーカルが印象的です。続く "Nell'aria sei" ではサビに向かって何かに取り憑かれたようなエキセントリックな巫女系のヴォーカルを聴かせてくれます。軽快なギターのコード・ストロークをバックに切々と歌い上げる"E' tutto qui" ではロック色の強い演奏をバックにセクシーな歌声を堪能できます。畳み掛けるような演奏に乗せた "L'attimo" では疾走感のある力強いヴォーカルを聴かせてくれます。キュートな歌声で囁きかけるように始まる "Non puo' fare male" ではしっとりとしたメロディをダイナミックに歌い上げています。きらびやかな音色のピアノに導かれた "Sono qua" ではダイナミックなロック・サウンドに乗せて次世代の女性ロッカーと言ってもいいくらいのスケール感のあるヴォーカルを披露しています。本編ラストの "Via" ではピアノの調べに乗せて切々と歌い始めてサビで一気に盛り上がっていくダイナミックなヴォーカルを楽しむことができます。ボーナス・トラックとしてタイトル曲の "Nuda" のアンプラグド・バージョンとラストに曲名が記載されていないシークレット・トラック "Ovunque" が収録されています。

Marchi

Veronica Marchi / veronica marchi (2005) La Matricula, LP007. (全10曲)

Verona 出身で1982年生まれの若手カンタウトリーチェ Veronica Marchi の2005年発売のデビュー・アルバム。全曲自身で作詞・作曲しており、全曲でアコースティック・ギターやピアノも演奏しています。次作ではより多彩なアレンジによるカラフルな作風となっていますが、本作ではシンプルなアレンジによる原石のようなフォーク・ロックを聴くことができます。オープニングの "Bambina" からギターのコードカッティングを主体とした骨太の演奏をバックに淡々と歌い上げるヴォーカルが印象的です。続く "L'anima vive" は早口によるヴォーカルからサビでの伸びのある歌声を聴かせる展開の大きな曲です。弦楽四重奏を従えた "Linea 31" ではフォーク色の強い穏やかなメロディを軽やかに歌い上げています。ピアノによる端正な演奏をバックに囁きかけるように歌われる "Fantasia" ではゆったりとしたメロディを優しい歌声で聴かせてくれます。落ち着いた音色のピアノのアルペジオに乗せた "Occhi di sole" では染み入るような哀感を漂わせたメロディを切々と訴えかけるように歌い上げています。ギターの爪弾きに導かれた "Io vorrei" では囁きかけるようなしっとりとしたヴォーカルを聴かせてくれます。典型的なフォーク・ロックを聴かせるラストの "Oltre (quasi cinque anni)" では穏やかなメロディを優しい歌声で軽やかに歌い上げています。派手さはないですが、しっかりとしたフォーク・ロックを聴かせるカンタウトリーチェ作品となっています。

Lady Roma

Doracor / Lady Roma (2008) Mellow Records, MMP 504. (全11曲)

'90年代後半から活動を続けるシンフォニック・ロック・バンド Doracor の1年振り7枚目となる最新アルバム。メンバーは Corrado Sardella(key,synth), Milton Damia (vo, g), Davide Guidoni (ds), Riccardo Mastantuono (g, el-vln, mandolin), Marco Maiolino (b), Vincenzo Antonicelli (sax) の6人編成で、Darryl Way's Wolfや Marillion で有名な Ian Mosley (ds) などがゲスト参加しています。このバンドは'90年代以降のバンドにありがちなキーボード・パートに歌詞を乗せたような不自然なヴォーカル・ラインがほとんどなく、メロディアスで魅力的な歌メロを張りのあるヴォーカルで聴くことができるのが特徴です。オープニングのタイトル曲 "Lady Roma" は4部構成の組曲で、モノローグから始まり多彩な音色のキーボード・ラビリンスが展開されるドラマティックなシンフォニック・ロックを聴くことができます。"Ente Roma Patia" ではキーボードによる畳み掛けるようなフレーズをバックに力強く歌い上げています。Ian Mosley が参加している "Imperium" はミステリアスなオープニングからキーボードを主体とした畳み掛けるような展開を見せる曲で、きらびやかな音色のキーボードが縦横無尽に活躍するインスト曲です。パッケージの記載では漏れていますが、続く "Lungotevere insonne" ではエレキ・バイオリンとキーボードによる短いインスト曲が収録されています。ラストはレギュラー・メンバー全員で緩急をつけた怒濤の演奏を繰り広げる "Tramonto sul Giardino degli Aranci" で締め括っています。

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