Musicadentro

第94号 (06/07/2008)

関東では既に梅雨が明けてしまいそうな勢いですが、皆さんいかがお過ごしでしょうか?今回はこの初夏に発売された新譜を中心にお送りします。

アルバム・カバー

アーティスト名 / アルバム・タイトル (リリース年) レーベル名, レコード番号. (収録曲数)

Artista

Francesco De Gregori / Per brevita' chiamato artista (2008) Caravan, 88697321982. (全9曲) CD-Text

ローマ派カンタウトーレのベテラン Francesco De Gregori の昨年末のライブ盤を挟んでオリジナル・アルバムとしては約2年振りとなる最新作。今回もカバー曲を除いて全曲自身の作詞・作曲で、数曲でギターとピアノも弾いています。オープニングのタイトル曲 "Per brevita' chiamato artista" からゆったりとしたリズムに乗せて語りかけるような渋めのヴォーカルによる穏やかなフォーク・ロックを聴かせてくれます。続く "Finestre rotte" はロカビリーを基調とした軽快なロックンロールで、小気味いいリズム・セクションをバックにした渋い歌声を楽しませてくれます。風が吹き抜けるようなハモンド・オルガンの音色が印象的な "Celebrazione" は De Gregori の男性的な歌声と女性コーラス隊との対比がほのかな哀愁を感じさせるフォーク・ロックに仕上がっています。シンプルなピアノの調べをバックに Chiara Quaglia とのデュエットを聴かせる "Volavola" では包み込むようなストリングスを従えて穏やかなメロディを切々と歌い上げています。Tom Russell のカバー曲である "L'angelo di Lyon" ではアコースティック・ギターを基調としながらも控え目なストリングスが静かに盛り上げる穏やかなフォーク・サウンドで聴かせてくれます。アルバム・ラストは本人のピアノの弾き語りによる "L'infinito" で、包み込むようなストリングスをバックに語りかけるようにしっとりと歌い上げています。初回盤はブックレットを封入したデジパック仕様となっています。

D'attesa

Moda' / sala d'attesa (2008) Around the Music, 0190162ERE. (全12曲)

2003年にデビューを飾ったポップ・ロック・バンド Moda' の約1年半振りの新作となるサード・アルバム。メンバーに若干変更があり、Francesco "Kekko" Silvestre (vo), Diego Arrigoni (el-g), Stefano Forcella (b), Enrico Zapparoli (ac-g, el-g), Claudio Dirani (ds) の5人編成で、全曲 Francesco が作詞・作曲しています。本作でもブリティッシュ・ロックの影響を感じさせながらもメロディ指向の強いノスタルジックな雰囲気に満ちたポップ・ロックを全編で聴くことができます。歪んだ音色のギターのコードカッティングに導かれたオープニングの "Saro' sincero" では力強いリズムをバックに哀愁漂うメロディをしっとりと歌い上げています。軽快にリズムを刻むギターをバックにしなやかなメロディを奏でる "Aria" ではスピード感溢れるヴォーカルを聴かせてくれます。タイトル曲の "Sala d'attesa" は囁きかけるような歌い出しから一転してサビで一気に高らかに歌い上げる短いながらも展開の大きな曲になっています。典型的なフォーク・ロック・スタイルの "Le luci della notte" ではゆったりとしたリズムに乗せて穏やかなヴォーカルを聴かせてくれます。端正なピアノに導かれた "Tra le tue mani" では切なさを感じさせる哀愁のメロディを切々と訴えかけるように歌い上げています。哀愁漂うアコーディオンの音色が印象的な "Meschina" では古いイタリア映画を彷彿とさせるアレンジとノスタルジックなメロディとが醸し出す雰囲気が絶妙です。曲のバリエーションがあまり多くないのが難点ですが、若手バンドの中ではメロディ指向も強い方なので聴きやすいと思います。

Trapassi

Marian Trapassi / Marian Trapassi (2004) Novunque, NOV 53/04. (全12曲)

2002年にアルバム・デビューした Palermo 出身のカンタウトリーチェ Marian Trapassi が2004年に発表したセカンド・アルバム。前々回紹介した最新作 "Vi chiamero' per nome" が好評だったため再プレスされたようです。今回もカバー曲以外はほぼ全曲彼女自身の作詞作曲で、ピアノも自身で弾いています。アコースティック・ギターの爪弾きに乗せて囁くように歌われるオープニングの小品 "Desideri" からやや鼻にかかった独特の歌声を楽しむことができます。続く一風変わったメロディを持つ "Storie" ではファルセットと地声を行き交う独特の唱法で Kate Bush を彷彿とさせるエキセントリックなヴォーカルを聴かせてくれます。フリューゲルホルンに導かれた "Luna fortuna" ではノスタルジックな雰囲気を持ったメロディをしなやかに歌い上げています。大きなノリのリズムに乗せた "Cosa c'e'" ではファルセットと地声が入り交じった歌声で起伏の激しいエキセントリックなメロディを歌い上げています。Alice のカバー曲 "Per Elisa" ではアンビエントな響きを湛えたバックの演奏に乗せて穏やかに始まり、サビで一気に畳み掛けるようにパーカッシブになっていくのが印象的です。Beatles へのオマージュになっていると思われる "Help e Penny Lane" では "Help" からの引用を含んだ歌詞を穏やかなメロディでしっとりと聴かせてくれます。アルバム・ラストは軽快なリズムに乗せた "La mosca" で、時折ファルセットへと移行する独特の歌声で勢いのあるポップ感溢れるロックを聴かせてくれます。

Croci

Miura / croci (2008) Target Music, TARG 2708. (全12曲)

Timoria のリズム・セクションを中心に結成されたオルタナ系ロック・バンド Miura の約3年振りとなるセカンド・アルバム。メンバーが大幅に変更になっており、Timoria の片割れの Illorca (b, vo) とヴォーカルの Jack が脱退し、Diego Galeri (ds) と Killa (g) に新加入の Max Tordini (vo) を加えたトリオ編成になっています。歪んだ音色のギターのリフに導かれたオープニングの "Linea di confine" から重厚な演奏と新加入の Max の力強いヴォーカルを前面に押し出したヘヴィなロック・サウンドを楽しむことができます。ごつごつした肌触りのギターの音色が印象的な "Perle e fiori" では畳み掛けるようなリズムセクションと男性的なコーラスを伴ったヴォーカルが一体となり爽快なロック・サウンドに仕上がっています。囁くかけるように始まる "M.A.I.A." では歪んだ音色の重厚なギター・サウンドをバックにゲストの Lubjan との男女デュエットによる官能的なヴォーカルの掛合いを聴かせてくれます。Gino Paoli のカバー曲 "Il cielo in una stanza" は畳み掛けるような展開を聴かせる重厚なロックへと変貌を見せています。ヘヴィなリズムが印象的な "Vile" では再び Lubjan がコーラスで登場し、男性的ながら単調になりがちなサウンドに華を添えています。曲調がどれも似通っていてイタリア色もほとんどないものの、オルタナ系のバンドとしては聴き所が多い作品に仕上がっていると思います。

Inseguendo

Berto / Inseguendo un pensiero (2008) La Tempesta Dischi, LTD-018. (全10曲)

Anemone などいくつかのバンドでギタリストとして活躍していた Friuri-Venezia Giulia 州 Pordenone 出身の若手カンタウトーレ Enrico Berto のソロ・プロジェクト Berto のデビュー・アルバム。オープニングの "Piccola vita immaginaria" から軽快な音色を奏でるギターを中心としたポップ感覚溢れるサウンドを聴かせてくれます。続く"Superficiale" ではアクセントを利かせたギターによるバッキングに乗せて爽やかなヴォーカルを披露しています。"Hawaii mon amour" ではトロピカルなリズムをバックにのどかな雰囲気を漂わせた歌声を聴かせてくれます。きらびやかな音色のギターの爪弾きに導かれた "Fatti strani" では'80年代を思わせるポップなメロディと軽快な演奏とが一体となりノスタルジックな雰囲気を漂わせています。テレビゲームの効果音のような音色に導かれた "La festa della noia (ora come a sedici anni)" は'80年代のエレ・ポップを思わせるアレンジが施され、ポップでキッチュなサウンドが展開されています。My Little Lover を彷彿とさせるポップ・サウンドを聴かせる "Astronave" は切なさを感じさせるメロディと軽やかなリズムの対比が印象的です。アルバム・ラストの "Semi" ではギターの爪弾きに乗せて語りかけるように歌われるヴォーカルとチェロや電子音の絡み合いが効果的で、終盤のインスト・パートへと一気になだれ込んでいきます。

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